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【映画】 ユナイテッド93 [film & dvd]

以前より気になっていた映画「ユナイテッド93」を見てきました。

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 結論から言うと、実際に起きた出来事を主題にした映画としてほぼ完璧な出来でしょう。個人的に、この手のドキュメンタリー的な映画は現実感の有無が勝負だと思ってますが、その点で非の打ち所がないですね。

映画の展開は一般に事実とされている内容にはほぼ全面的に沿っており、リアリティをとことんまで突き詰めたかのような映画になっています。しかも、ヘタに主義主張を盛り込んだりせずに、客観的な視点に徹していることが作品に非常な凄みを与えているのです。特に最後の一連のシーンなどは、これはもう映画・映像の力を見せ付けられた感じですね。あれは言葉で語るよりも、あの映像を見ることの方が何倍もの重みを持つのではないでしょうか。

また、エンドロールを見ていると、一部役名のところが「As Himself」となっていて、「え、本人がやってたの?」と驚かされたりも。それは迫真の演技になるわけで…。あとは、いわゆる有名俳優を起用していないのももう大正解でしょう。こういったところからも、余計な要素を加えずに、極力事実に忠実に作るというスタッフの意思が感じられるような気がしますね。

 

しかしながら、早いもので9・11のテロからもう5周年。思えば、私は当時アイルランドに語学留学中でした。あの日の午後に、学校の図書館でメールを見ると友人から事件の内容を知らせるメールが来ていて、最初は悪い冗談でも言っているのかと思ったことを良く覚えてます。あとは、当時ホームステイしていた先の娘さんが、そのつい2年前までWTCで働いていたということもあったり…。

ちなみに、アイルランド政府はこの事件の二日後を急遽、国民服喪の日(National Day of Mourning)として休日にし、商店や交通機関などは基本的に休業、開いているのは教会のみ、という対応を取っていました。カトリック信仰に篤い国ならではですが、これにはもう一つ理由が。NYPD(ニューヨーク市警)やFDNY(同消防局)にはアイルランド系の移民が非常に多く、この時にも多数の殉職者が出たそうで、彼らの追悼の意味も込めての措置だったとか。

 

それにしても、過去というよりはまだ同時代の出来事、それも特にこの9・11という事件をもとに映画を作るのは、これは相当に難しい面もあることでしょう。にもかかわらず、一発目にこれほどの出来の作品が出て来たことは驚きですらあります。これからもアメリカ中心主義に染まることなく、いろいろな角度からこの事件について考えさせられるような映画が出てくるのを期待したいですね。


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クリス

これはかなりのデキやったよね。現実性と客観性とがいかんなく発揮されていて、本人役が何人もいたから、それこそ私もタイムスリップしてしまったよ。
アイルランドのその後の対応も、そうやったんかぁと思ったよ。なるほどね、アイリッシュ系の犠牲者がいっぱいいたのかぁ。
なんにしても、5年経ってようやくこの手の映画が作られるようになって、ニコラス刑事の新作なんかもそうやけど、この映画に勝るものは生まれるのかなぁ?というか、ドキュメンタリータッチをとっていて、これ程の忠実さを再現してしまうと、後はアメリカっぽいドラマ映画が続きそうな気がしてね~。
by クリス (2006-09-13 14:24) 

bone-shaker

いや~、この映画には唸らされましたよ。一切の前評判を聞かずにどんなもんかと思って見に行きましたが、まさかここまでの出来とは…という感じです。あれを見ると誰しもタイムスリップしてあの時のことを思い出してしまうんじゃないですかね。
ニコラス刑事の新作の方は果たしてどうなんでしょうねぇ。これほどの映画の後に、アメリカン全開なのを持って来られると非常な失望感を覚えそうですが(笑)。
by bone-shaker (2006-09-13 23:49) 

うつぼ

トラックバックありがとうございます。(私もトラックバックさせていただきました)
アイルランド人が警察や消防に多いのはNYを舞台にした映画でよく観るのですが、最近の中ではエドワード・ノートンの「25時」が印象に残っています。アイルランド移民系の主人公が警官の父親に悪で儲けた資金を援助してアイリッシュパブを出店させると、そこにNYPDの警官達が集まってくる、という(映画の主なあらすじからは離れた脇の話なんですが)内容を思い出しました。9.11というのは当事者ではなくても各々に色々な思い出が残る大きな事件だったのだと改めて思いました。
by うつぼ (2006-09-13 23:59) 

bone-shaker

utsubohanさん、こちらこそnice!とコメントありがとうございます。
聞いた話では、アイルランドからニューヨークに渡った移民たちが手っ取り早く着ける一番まともな職が実は警察官だそうです。で、その昔のNYでは、アイリッシュ系の警察官がアイリッシュ系のギャングを取り締まるという奇妙な光景がよくあったとか…。その「25時」という映画も微妙にそれに近い感じで興味深いですね。
by bone-shaker (2006-09-14 00:20) 

うつぼ

bone-shakerさん、
アイルランド系移民が就きやすい仕事が警察なんですか。移民が多いNYならではの映画が多いように思うのですが(先日観たウェストサイド物語もそうですが)、その中でもアイルランド系移民を描いた話、結構ありますよね。 ところで、bone-shakerさんが上で書かれていますが、ニコラス刑事(!)の作品は私も「ユナイテッド93」を観た後に観る気がしませんね。元々あの顔が苦手なのもありますが。(笑)
by うつぼ (2006-09-14 22:57) 

bone-shaker

utsubohanさん、コメント遅くなって申し訳ありません。10日間ほど家を空けていたものでして…。
で、確かにアイルランド系移民を描いたアメリカ映画って多いですよね。「ダーティー・ハリー」なんかもあれはアメリカのアイリッシュ移民の典型としてのキャラ設定らしいですし。あと、私はニコラス刑事は俳優として嫌いじゃないのですが、それでも今度の新作はちょっと…という感じですね。というより、いわゆるハリウッドスターが主演するようでは、なかなかこの映画を上回る出来のものは難しいような気がします。
by bone-shaker (2006-09-27 01:38) 

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